短歌=短歌= 丘に立つ冬木の枝はそれぞれに星のいくつか抱えてをりぬ いくたびも大地を染めて土となりまたその上に桜散りゆく 幼子の小さきまぶたゆるゆるといきつもどりつまどろみに落つ 独りいてふと湧き起こる激情の向けるとこない三日月の夜 吾子が吐く辛きことばにあふれ出る涙を見れば舐めに来る犬 夕焼けの色も消え失せ闇となる星出るまで宇宙に独り 病む吾の背を揉みほぐすやさしさも指の力も二十歳となりぬ 今日ひと日楽しみ見つけ生きんとす空の蒼さに鳥の姿に 子の髪の赤く染まりてざわざわと湧き来る不安しずめては湧き あなたとのつながり薄き今生に一日は常にあると限らず /ヒトヒ 仰向けに寝られぬ夜のせつなさは時刻を刻みて止まることなく /トキ 石垣の小さき石も支えなり幾百年の苔も積もりて 波のごと喜怒哀楽を次々に味わいて来て今日は青空 精神を病む人といてあたたかし何を心と人は言うのか 冬の野にレール真っ直ぐに陽を反し未来に抜けて延びて行くなり 年末のあわただしさに見上げれば月は静かに宇宙にいたり 母として面談を待つ窓からのテニスコートに溯る時間 /トキ 沈めてた想いぼわぼわ浮き上がり水が淀んで前が見えない 樹々揺らし野の花揺らす風の波いつか私も同じリズムで 朝日受け今朝開きたる花一つ生まれたばかりのオレンジ色 突然に出会いし鹿の大きなるまなざし澄んで佇みていし 午後三時ペンキまみれの少年がペットボトル買う腕の細さよ 何十の蝉のいのちをかかえこみ欅ゆたかに影をつくれり 「もしもし」の声聞くだけで見えてくる君の心の彩度と明度 刻々と色を変えゆく大空に冬木が描く幾何学模様 誰か呼ぶそんな気がして見上げてもさわさわ揺らす風がいるだけ 春山に見え隠れする雪山は旅の車窓の名も知らぬ山 限りある命であれば輝ける一日重ねて生きよと思ふ/ヒトヒ 膝に乗る愛犬の顔なでながらここちよきその重みと温もり 鈍色にゆるやかな弧を描きたる海の向うに憧れし日々 ジャンル別一覧
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